大手前36会卒業45周年の新年会での記念スピーチ

健やかに老いる〜老化に納得〜

2007.1.06

医療法人古川医院理事長 古川宏太郎

 

 私が日頃診察室で高齢者に話していることをお話します。診察室で患者さんから学んだことが沢山あります。患者さんは生きた教科書で、本に書いていないことを教えて下さいます。

 我々は15歳の時に大手前高校で出会い、早やほとんどの人は65歳です。今年は65歳という高齢者の仲間入りをする年になってしまいました。高齢者は抵抗力が落ちるので、特別に1,000円にしますからインフルエンザの予防接種をしましょうと、労わられる年になったのです。

顔が浮かんでも名前が出てこないとか、これは大切なことだからメモを取っておこうと、メモ用紙を探しているうちに、何をメモしようとしたのか分からなくなるなど、老年性認知症が出てきたのでは、と不安になることがあります。このようなことを患者さんが訴えられると“テープレコーダーに例えると、今まで頭に一杯記憶してきたので、テープに記録すべき余裕が無くなってきたのです。もう一本新しいテープを入れられたらい良いのですが”とお話ししています。

脚立の上に立つとふらつき、支えが無いと立っておられないというのは、平衡感覚の低下です。心身の衰えの愚痴を並べても良くはなりません、さあ!今の自分に納得して如何に老後を生き抜くか自分で考えて行きましょう。人様々です。

☆一病息災

加齢と共に病気が出てきても不思議ではありません。車でも古くなれば故障が増えてきます。修理できる所は早く修理しておきましょう。無病息災といわれてきましたが、早く医師に病気を発見してもらうには一病息災が良いのです。

 

    骨休め

殆どの人は50歳半ばから持久力の低下を感じておられると思います。バッテリーは古くなれば充電できる容量は減り、すぐ放電してしまい何回も充電が必要になるように、人の身体も加齢と共にまめに休息をとって充電してやらなくてはならなくなります。骨も弱ってきます。特に女性は閉経後、骨よりの脱灰現象で骨粗しょう症が進行します。昼寝の時間を20−30分でもとり、充電と共に骨や筋肉を休ませてやることが大事です。これを称して“骨休め”。

夜、眠られないという高齢者が多いですが、性能の落ちたバッテリーですから短時間で充電できてしまうので(少ないながらも)長く眠る必要は無いのです。小分けして睡眠をとることが必要なのです。

    老いて住む場所を変えないこと

現役で仕事をしている人は問題ないのですが、現役を離れた人は近隣との交流、すなわち慣れた社会環境を大切にしたいものです。同じところに長く住んでいると地域の仕事や世話役に駆り出され、これを通して周囲との交流が深まります。老木は植え替えると根を張らずに枯れてしまうのです。

 

    摂取カロリーを減らしましょう

生活習慣病は加齢と共に遺伝子として持っている高血圧、高脂血症、糖尿病などが発症してきます。Metabolic Syndromeといわれていますように、The

longer the belt, the shorter the life.ということです。腹囲は男性は85cm以下、女性は90cm以下に抑えましょう。10歳から70歳くらいまで身体の脂肪は増えてゆきます。加齢と共に代謝が落ちてゆきます。それに伴い、体温は低下、消費カロリーは減少します。若い時と同じ量を食べると、余分のエネルギーが身体に残り、中年太り・老年太りになります。人間本来の生き方は狩猟・農耕ではないかと思います。大いに身体を使いましょう。

 

    生活にリズムをつくりましょう

我々は物心がついてから、幼稚園・学校入学に始まり、その後は会社・組織に入るか・主婦として家庭に入るかして、一日のスケジュールが強制的に作られ、生活のリズムが出来ていました。しかし、退職後は生活のリズムは自分で作らなくてはなりません。寒い朝は昼頃まで寝床に入っているような不規則な生活に成りがちです。犬でも飼っていれば、犬に起こしてもらって、一緒に散歩するもの良いでしょう。犬は飼主には絶対服従してくれます。今迄、部下に命令していた分、犬に命令できるので心も幾分和むでしょう。かあちゃんに、下手に命令すればこれは大変、叱られます。難しいことですが“自分が置かれた環境を最大限に生かす”ことが一生を通じて大切なことだと思います。

 

最後に、しかしというかやはりというか女性は強い!旦那は嫁さんに死なれると、殆どの人は寂しさから立ち直れず、フニャフニャになって後を追いま

す。が、女性は夫を失っても一年も経てば生き生きと蘇り、女性同士で仲間を作り楽しく余生を送る人が多いのです。この差は何処にあるのか?

“女は強い!!”です。              おしまい。

                                  (原稿の掲載について土谷逸郎氏にお世話になりました)